研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
理仁のアパート103のドアを勢いよく開ける。
奥の部屋の理仁が「おー!」と元気に振り向く。

靴を脱いで急いで部屋に上がった。

机の上の顕微鏡周りに持ち帰ったボトルが置いてある。

理仁が「今んところ、全部オス!」と嬉しそうに報告してきた。

「よかった」

思わずその場にへたり込む。

「あー良かったー」

理仁も大きく伸びをする。

私は理仁のパソコンを借りてデータを作り始めた。

隣から理仁が指示してくれる。

私たちの論文が、やっとゴールの光に近づく。

トンネル、長かった。

本当に終わる日がこうして来るなんて、ちょっと信じられない。

資料の中、一つだけ抜けていたデータがキレイに収まる。

理仁の方のプレゼン資料にも同じデータを入れて、端的に文章を打ち込む。

「いいんじゃない?これで」

理仁がパソコンを眺めてから、私の表情を伺う。

「待って、ちょっと、もうちょっと変えたい」

そう答えると、理仁が笑った。

「とことんやってくれー」

理仁がコタツにごろんと転がった時。

ゴーン、と街全体に響き渡る音。
除夜の鐘だ。

ああ、もう今年も終わる。

転がってる理仁と目が合う。

「初詣行く?」

理仁の方から言ってきた。
私は打ち込もうとしていた手を止める。

「うん」

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