研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
寒くないようにコートもしっかり前を閉める。
理仁もぶくぶくに着込んで、0時前、部屋を出た。

外の空気がツンと肌を刺す。

「さっむ」

理仁が背中を丸める。

「こんなんじゃミジンコ死んじゃうよ」
「絶滅しないためにオスがいるんでしょ」

私の言葉に、理仁が「おっ」と反応する。

そう、メスだけで産んだ卵は環境の悪化に耐えられないけど、オスとの受精卵は環境の悪化を乗り越えられる。

環境が良くなるまで耐え忍んで待つことができる。

「ロマンだよね」

理仁が呟く。

は?って顔をしてしまったと思う。
白い息を吐きながら私を見る。

「オスとメスがいて、初めて困難を乗り越えられるんだよ、ミジンコは」

たぶん、冗談じゃない。

この人は本気で、そこにロマンを感じてる。

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