研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
論文はその日のうちに教授に提出された。
確認されている間、突然空白の時間ができる。

記念館にあるカフェ。

光が差し込む店内に、理仁と私の二人だけだ。

「あとはもうひたすら発表の練習だけだね」

私がジンジャーチャイを飲みながら言う。

「ここまで来たら、もう早く発表したくて仕方ないよ」

嬉しそうに笑う。

この笑顔が見れて本当に良かった。

正直、私は全然発表したくないけど。

「英語の練習しなきゃ」
「いつも李さんとガルシアと話してるじゃん」

「大丈夫だよ」と言う。

なんで理仁はこんなにも私を励まし続けてくれるんだろう。

ミジンコのメスは、オスがいるから困難を乗り越えられる。

理仁のロマンを思い出した。

え、もしかして理仁って私にとってのミジンコのオスなの?

あれ?私たちってミジンコ?

そう思った時、理仁のスマホに電話が掛かってきた。

教授だ。

電話に出る理仁。

「ほんとですか、はい、すぐ行きます」

きっと見終わった報告。

理仁が立ち上がって私に視線を送ってきた。
オッケーの手をしてる。

つい笑顔が出てきてしまった。
良かった。

すぐに電話が切られると、理仁も思いっきり笑う。

「すごいじゃんって、教授」

理仁の右手がサッと上がる。
私も遠慮なくその手に思いっきり叩き込む。

喜びのハイタッチ。

と思いきや、ギュッとその手を握られた。

「頑張ったね、俺たち」

そう言って歯を見せて笑う。

頭上で繋がった手をブンブンと揺すった。

「おつかれ」

私も本当に嬉しい。

大好きな人と同じ喜びを噛み締め合えることの幸せ。

あと残すは、2月の国際学会。

発表の練習が始まった。
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