身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

 柊一さんが感心したように頷いている。おそらくこの歳の子供から結婚という言葉が出たことに驚いているのだろう。

 冬真本人は意味もわからずに言っているのだけれど、たぶん柊一さんはそこまで気付いていないと思う。

 それにしてもどうして突然、愛菜ちゃんの話を始めたのだろうと不思議だったけれど、そういえば柊一さんが来る前に冬真と愛菜ちゃんの話をしていたことを思い出した。

 柊一さんのことを説明するために愛菜ちゃんを出せば〝大切なお友達〟の意味を冬真にわかってもらえると思ったのだけれど、伝わったのだろうか。

「ママ言ってた。おじちゃんは愛菜ちゃんだって」
「ん?」

 冬真の言葉が理解できなかったのか柊一さんが首をかしげる。そんな彼に冬真が一生懸命説明している。

「あのね、おじちゃんはママのお友達で、僕のお友達だと愛菜ちゃんなんだって。僕、愛菜ちゃん大好きだから、ママもおじちゃん大好きなんだね」

 どうやらしっかりと本人に伝わっていたらしい。でも、それを柊一さんの前では言わないでほしかった。

< 106 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop