身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
恐る恐る柊一さんへ視線を向けると、彼は冬真を見つめながら静かに笑っていた。
「……なるほど。そういうことか」
どうやら冬真の言いたいことが理解できたらしい。「冬真君」と呼び掛けて、にこりと微笑む。
「おじちゃんもママのこと大好きだよ」
さらりと告げられたその言葉に、不覚にも心臓がどきんと跳ねてしまった。ふたりの会話が聞こえていないふりをしようと背を向けてお皿を拭くことに集中する。
すると、冬真の弾んだ声がキッチンに届いた。
「本当!? じゃあ、僕と愛菜ちゃんみたいにケッコンだね」
「はは。そうか、結婚か」
柊一さんの楽しそうな笑い声が聞こえる。けれど、それが突然、低く真面目な声に変わった。
「――俺は、そのつもりだったんだけどな」
呟くようなその言葉に、今度は胸がぎゅっとしめつけられた。
気が付くと夜八時を過ぎていて、冬真を慌ててお風呂に入れてから寝かしつけをした。
保育園でたっぷりとお昼寝をしたものの、夜は柊一さんが来たことで少し興奮してはしゃいだせいか布団に入ると五分も経たずに眠ってしまった。