身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
たしかに私は冬真に柊一さんのことを愛菜ちゃんに例えて説明したけれど、まさか冬真がそれを柊一さんに話すとは思わなかった。
途端に恥ずかしさが込み上げてきて、今さらだけどごまかすことにする。
「な、なんのことですか」
「とぼけるなよ」
柊一さんはソファから立ち上がると、私の隣に腰を下ろした。そして、口元に笑みを浮かべながら私の顔を覗き込んでくる。
「俺はうれしいよ、美桜。お前が冬真に俺のことを〝大好きな人〟って説明してくれたこと」
柊一さんの手が私の頬に触れると、そっと顔の向きを変えられる。柊一さんと視線が交わり、途端に恥ずかしくなって目を伏せた。
すると、柊一さんの顔が少しずつ私に近付いてくるのがわかって、すぐ目の前まで迫っている彼の唇に慌てて自分の手を当てた。
「相変わらず手が早いですね」
危なかった。キスされそうになっていることに気付き、寸前のところで回避した。
そう簡単に解されてたまるか。私はもうあの頃とは違うんだ。北海道出張のときのように流されたりしない。