身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

『美桜はもうドレスに興味がなくなったのか?』

 そう尋ねられて、耳に当てているスマートフォンをぎゅっと握り締める。

「はい。興味ありません」
『嘘つくなよ。じゃあどうしてドレスの画集やカタログをまだ持ってるんだ」

 柊一さんの言葉にぎくりと体が強張る。

『この前、美桜の家に行ったときに見つけた。お前がよく見ていたドレス関連の本が、冬真の絵本と一緒に本棚に入っているのを。美桜、お前まだ本当はドレスの仕事がしたいんだろ』
「違います。あれは捨てるのがもったいなくて――」
『それが証拠だろ。興味がないならもったいないなんて思うはずがない。まだどこかに未練があるから大切に持っていた。違うか?』
「……っ」

 柊一さんの言っていることはたぶん当たっている。

 セリザワブライダルを辞めたあとも、私はまたドレス関連の仕事ができる職場を探そうと思っていた。でも、その矢先に冬真を妊娠していることがわかり、再就職どころではなくなってしまった。

 出産後もひとりで冬真を育てるためには仕事を選ぶ余裕なんてなくて、ドレス関連の仕事に就くことは諦めた。

 それでもやっぱり心のどこかで子供の頃からの夢だけは諦めきれていなかったんだと思う。だから、ドレス画集だけはどうしても手放せなかった。

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