身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

 柊一さんは冬真の父親で、冬真は柊一さんの息子。それは紛れもない事実だ。隠す必要なんてどこにもない。

 私は、そっくりな顔のふたりを交互に見てから大きくうなずく。

「うん。呼んでいいよ。柊一さんは冬真のパパだよ」
「やっぱりそうなんだ! 僕のパパだ!」

 やったーと冬真がはしゃいでいる。その姿に、私と柊一さんは顔を見合わせると、ふたり同時に思わず笑いがこぼれた。





 動物園から帰宅する電車の中で冬真はぐっすりと眠ってしまった。

 アパートに到着しても起きる気配がなく、あまりにも気持ちよさそうに眠っているので、今日はもうこのまま寝かせることにした。

 リビングに戻ると、ここまで冬真をおぶってきてくれた柊一さんがソファに腰を下ろしている。

 もうすっかり我が家に馴染んでいるが、彼がこの家に来るのはまだ三回目。冬真に会ったのは今日で二回目だ。

「まさかこんな形で冬真に父親のことを打ち明けることになるとは思いませんでした」

 柊一さんの隣に腰を下ろしながらそう告げると、彼の視線が私に向けられる。

「まだ知られない方がよかったか?」
「いえ、これでよかったのかもしれないです。冬真、うれしそうだったから」

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