身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
柊一さんは、私がセリザワブライダルで働いていた頃から私の仲良しの同期である若葉のことを知っている。そして、若葉もまた柊一さんと私が付き合っていることは知っていた。
たぶんそれで柊一さんはこっそりと若葉にだけ私が来ることを教えたのかもしれない。
「私、美桜が辞めたあとに社長の縁談の噂を耳にしたの。断ったら社長に就任できないって聞いて。もしかしてそのせいで美桜は社長と別れないといけなくて、仕事も辞めちゃったのかなってずっと心配だった」
若葉が私をぎゅっと抱き締める。
「どうして相談してくれなかったのよ。私たち同期でしょ」
「ごめんね、若葉」
私も若葉の背中に手を回すとそっと抱き締め返す。
「本当に心配したんだから。また今度ご飯でも食べながらしっかり事情を説明してよ。社長との今の関係や、社長そっくりな息子君のこともね」
「え⁉」
その言葉に驚いた私は、若葉の体をとっさに離した。
「もしかして若葉、冬真に会った?」
「うん。社長と一緒にいたからね。可愛く自己紹介してくれたよ。島本冬真、三歳ですって。美桜と社長の子供だよね」
「……うん」
私は戸惑いながらもうなずいた。すると、若葉が複雑な表情を見せる。