身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
「冬真君が美桜の苗字を名乗っているってことは、社長と結婚しないままずっとひとりで育てていたの?」
「うん。でも、これからは柊一さんと一緒に育てていくつもり」
そう答えると、若葉の表情が少し明るくなった。
「そっか。まだまだ聞きたいことは山ほどあるけどまた今度にする。これからはもう前みたいに美桜に会えるんだよね」
「私もまた若葉に会いたい。本当に今までごめんね」
私は改めて若葉に頭を下げた。そんな私の肩に若葉がそっと手を乗せる。
「それじゃあ、四年間も私を心配させたお詫びとして、私のお願い聞いてくれるよね」
「お願い? 私にできることなら……」
そっと顔を上げると、目の前の若葉がにっこりと笑顔を見せる。そして、私の腕に自分の腕を絡めてきた。
「今回のショーの一般モデルは美桜に決めた」
「モデル?」
なんだっけ?……と、考えてハッと思い出す。
「えっ、アレのこと?」
「そうそう。衣装事業部にいたんだから美桜も知ってるでしょ」
「知ってるけど、なんで私?」
「実は私がここに来たのは、そのスカウトも兼ねてたのよね」
にんまりと笑った若葉が私の腕を引っ張って歩き出す。そのまま私たちはドレスショーの会場から離れていった。