身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

 私、大丈夫かな。

 不安ばかりが募ってしまう。

 会場である教会の前に到着すると、緊張でとうとう足が震えてきた。

 こんな状態でまともに歩くことができるのだろうか。しかも、ドレスの裾の長さに合わせて十センチ以上のヒールを履いているので、普通に歩くだけでも大変なのに。

 けれど、選ばれたからにはしっかりとこなさないといけない。そうでないと、私が着ているウエディングドレスがかわいそうだ。

 中央のバージンロードを歩いていき、その先にある祭壇で折り返して戻ってくればいいだけ。大丈夫。できる。と、深呼吸を繰り返しながら自分に言い聞かせる。

 そうしているうちにとうとう開始時刻を迎えた。生演奏の音楽がかかり、ドレスショーが幕を開ける。

 トップバッターのモデルが会場に現れると、歓声が沸き起こる。

 ランウェイを歩くのはひとりずつ。だからその間、お客さんの視線を一心に集めることになる。

 自分の順番が近づくにつれて緊張感が増していき、足だけだった震えが全身に移動してきた。

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