身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
「緊張してる?」
柊一さんに尋ねられて、私はこくんと大きくうなずいた。もう緊張し過ぎて声すら出せない。
「美桜、息できてるか? めちゃくちゃ顔色悪いけど」
さっきから私の緊張を感じ取っている柊一さんが、私の顔を覗き込んで確認してくる。そうしているうちに私の前のモデルさんが戻ってきてしまった。
いよいよ私がランウェイを歩かなければならない番だ。
行かないと……。
そう思って一歩を踏み出すものの二歩目がなかなか前に出ない。
「ったく。掴まってろよ」
瞬間、震えている足が地面から離れて、私の体がふわっと宙に浮いた。柊一さんが私を軽々と抱き上げたのだ。しかもお姫様抱っこで。
「このまま途中まで運んでやるから、あとは自分で歩けよ」
そう言って、私を横抱きにしたまま歩き出した柊一さんが、ランウェイに見立てたバージンロードをゆっくりと進み始める。
すると、客席からは一段と大きな歓声が上がった。