身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

「まさか美桜が一般モデルに選ばれるとはな。これは俺も予想外の展開だった」

 私を振り返った柊一さんが苦笑している。

「それで、どうだった? ショーはしっかり見られなかったけど、久しぶりに大好きなドレスは堪能できたか」
「はい。控室で着替えているときに、新作ドレスや人気ドレスをたくさん見られて幸せでした。今私が着ているドレスもとってもきれいだし。やっぱり私はドレスが大好きだなって思いました」
「じゃあ、またうちの会社で働く?」

 そう問われたけれど、私はすぐに首を横に振った。

「いえ、これを機にきっぱりと諦めます」
「諦める?」
「ドレスのデザイナーになる夢は諦めます。だからセリザワブライダルにも戻りません。今日は、その覚悟を決めようと思ってここへ来たので」

 もう未練はないはずだ。最後に、自分がウエディングドレスを着てショーに出るという形でドレスに関わることができて幸せだった。

「待て。俺は、そんな言葉を聞きたかったわけじゃない」

 柊一さんが私に一歩詰め寄る。その表情はどこか苛立っているように見えた。

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