身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

 ふと当時を振り返っていると、私の右手に柊一さんの左手が絡まり、優しくぎゅっと握られる。

「美桜。冬真を産んでくれてありがとう」

 まっすぐに冬真を見つめて告げられたその言葉に、私は「うん」とうなずいてから、彼の手を握り返した。


 ――私はもうこの手を絶対に離さない。この人から離れたりしない。


「パパ。お姫様と手つないでるの?」

 私たちのもとへとやって来た冬真の視線が不思議そうに私へと向けられる。

 そのとき私はあらためて自分の今の格好に気が付いた。もしかして、ウエディングドレスのせいで冬真は私に気が付いていないのかもしれない。

 じーっと私を見つめる冬真の視線が、やがてハッと驚きに変わった。

「あー! ママだ! ママがお姫様になってる!」

 ようやく気が付いたらしい。そんな息子を見て思わずくすっと笑ってしまった。

「ママかわいいよ! ほら、パパも見て」

 声を上げてはしゃいでいる冬真が、柊一さんのスーツのズボンをつんつんと引っ張る。

「本当だ。ママ、かわいいな」

 そんな息子の髪を柊一さんが愛しそうにくしゃりと撫でた。

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