身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
「うん、いいよ。だって、ママもパパが大好きだよ。だから、結婚できたら嬉しいよね」
そう言って、冬真が弾けるような笑顔を見せる。
その瞬間、なんだかじわっと涙が浮かんでぽろぽろと頬に伝った。すん、と鼻をすすったら、その音に気が付いた冬真が私を振り返る。
「ママ、どうしたの? どこか痛い?」
「ううん、なんでもないよ。大丈夫」
涙を拭きながら冬真に向かって笑顔を見せると、柊一さんがすっと立ち上がった。その腕が私へと伸ばされると、そっと優しく抱き寄せられる。
「美桜」
優しく名前を呼ばれた瞬間、もっと涙が溢れてきてもう止まらなくなった。
「ママ」
冬真も私の足元にきて、小さな手でドレスの裾をぎゅっと握る。その頭をそっと撫でてあげると、冬真がにっこりと微笑んだ。
下に向けていた視線を上に向けると、柊一さんも私を見つめて穏やかな表情を浮かべている。