身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

 ちなみに、榊さんは芹沢課長のいとこらしく、そのせいでさっき芹沢課長は榊さんのことをうっかり名前で呼びそうになっていたのだろう。

『で、明日までには終わるのか』
『はい、おそらく……』

 正直、今のところ終わる気が少しもしないので、こうなったら今日は残業をしようと決めている。そうすればさすがに明日までには終わらせることができるはずだ。

『お前、そもそもこのソフトの使い方まだしっかりと覚えてないだろ』
『うっ……』

 芹沢課長の鋭い指摘に思わず言葉に詰まってしまう。

 彼の言うことは当たっていた。私は、ソフトの使い方をいまだにしっかりと理解できていないので、いつもマニュアルを見ながら操作している。

 だから、たまに変な場所をクリックして別のページに飛んでしまったり、入力したはずの数字が消えてしまったり、開きたいページが開けなかったり……と、そのたびにマニュアルを見ているので余計に時間がかかってしまう。

 でも、仕方ないじゃないか。だって、私にこのソフトの使い方を指導してくれた先輩の女性社員にやる気がまったくなかったんだから。

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