身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

『せっかく芹沢課長が直々に指導してくださっているのにすみません。でも、あの……距離が近くてですね。課長にちょっとドキドキしてしまいまして……』

 私はいったい何をぺらぺらと喋っているのだろう。

 言わなくていいことを言っていると気が付き、ハッと口をつぐんだ。けれどもう遅くて、芹沢課長にまるっと聞かれてしまったようだ。

 目の前で芹沢課長が目を見開いて固まっている。怒っているのだろうか。せっかく説明してやってるのになに考えてんだこの女は……とか、思われているのだろうか。

 すみません。と、すぐに謝罪の言葉を口にしようとすると、それよりも先に芹沢課長の口から大きなため息がこぼれた。

『お前さ、そういうこと……』

 そこまで言って口を閉じてしまい、プイっと視線をそらされた。そのあとでまた大きなため息を吐かれてしまう。

『ほら、もう一度説明するから今度はちゃんと聞いとけよ』

 芹沢課長はそう言うと、再び私にソフトの使い方の指導を始めてくれた。


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