身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
それから二週間後、私と芹沢課長は北海道出張へと向かった。
けれど、実はその前日……。毎日の残業で疲労がたまっていたせいか、履き慣れているはずの八センチのハイヒールパンプスで駅の階段を踏み外した私は、右の足首を捻ってしまった。
出張には予定通り来たものの、歩くたびに足首に激痛が走り、不安なまま北海道での仕事が始まってしまう。
空港に到着した私たちがまず初めに向かったのは、小樽にあるセリザワブライダルの式場に併設されたドレスショップ。
そこには、自社ブランドのウエディングドレスやカラードレスの他に海外ブランドのドレスがずらりと並んでいた。
今日はこれから、北海道二号店の参考にするため、一号店であるこのショップのリサーチを行う予定だそうだ。
最近よく出ているドレスの傾向や、逆によく出ていないドレス、自社ブランドと海外ブランドだとどちらが人気なのか、などの聞き取りを行うらしい。
けれど、どうやら責任者の方がお客様の対応をしているようで、それが終わるのを私と芹沢課長は店内のすみに立って待つことになった。