身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

『またああいうドレス作れるようになりたいなぁ』

 ぽろっとこぼれた本音に、改めて自分の気持ちに気付かされてしまった。

 私は、やっぱり衣装事業部に戻りたい。最近では慣れない業務に日々追われて、ドレスデザイナーになりたいという子供の頃からの夢を諦めかけていた気がする。

『そういえば、島本はウエディングドレスのデザインがしたくてうちの会社に入ったんだよな』
『そうですけど、どうして芹沢課長がご存知なんですか?』
『この前の面談で話していただろ』
『あっ、そっか……』

 一か月ほど前、直属の上司による人事評価の面談が行われた。そのときに、セリザワブライダルに入社した理由を芹沢課長の前で話した気がする。

『お前、衣装事業部に戻りたいんじゃないのか』
『え?』
『このまま第三営業課にいたらドレスのデザインなんてできないだろ』
『それは……』

 たしかにその通りだ。ドレスのデザインをするためには、まずは衣装事業部に配属されなければならない。

『戻りたいなら俺がなんとかしてやってもいいけど』
『そんなことできるんですか?』
『俺を誰だと思ってんだ』

 そう言って、芹沢課長がにやりと笑う。

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