身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

 こうしてなんとか無事に北海道でのすべてのスケジュールが終了したのは夜の七時過ぎ。

 夕食をすませた私たちは、ホテルへと向かう。けれどその途中で私の足は限界を迎え、とうとう一歩も歩けなくなってしまった。

『――どうした?』

 突然うずくまった私を芹沢課長が振り返る。

『すみません。歩き過ぎたせいか足が痛くて』
『そんなになるほど歩いてないだろ。運動不足じゃないのか』
『あはは。そうかもしれないですね』

 笑ってごまかしてから、痛む足を堪えてなんとか立ち上がる。けれど、限界を超えた足首にはもう力が入らず、痛みもあってふらりとよろけてしまった。

『おい、大丈夫か』

 そんな私の体を芹沢課長が受け止めてくれる。それから不意に彼が私の足元にしゃがんだ。

『お前、足が腫れてるぞ』

 どうやら気付かれてしまったらしい。悟られないようになんとか耐えていたものの、観念して打ち明ける。

『実は昨日、駅の階段で足を滑らせまして、足首を捻りました』
『は?』

 しゃがみながら私の足首の腫れ具合を見ていた芹沢課長の顔が持ち上がり、私を見上げる。

『お前、どうしてそれを今まで俺に黙ってた』

 芹沢課長がすっと立ち上がり、ため息をこぼす。

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