身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
『明日は飛行機の搭乗時間まで少し余裕があるから、もう一杯味噌ラーメン食べてから東京に帰るか』
そんな話をしながら芹沢課長の腕が私の膝裏に回り、もう片方の腕が腰に回る。気が付くと私の体はふわっと宙に浮いて、あっという間に横抱きにされてしまった。
『芹沢課長⁉』
落ちないようとっさに芹沢課長の首に手を回す。
『しっかり掴まってろよ』
どうやら私が頑なにおぶられることを拒んだので、強引にでも横抱きにしたらしい。
そのままずんずんと歩き出す芹沢課長。すれ違う人たちがそんな私たちの様子を振り返る姿が目に入るけれど、彼は気にせず私を〝お姫様抱っこ〟したまま進んでいく。
『重たくないですか』
『余裕』
恐る恐る尋ねると、さらっと言葉を返される。その言葉通り、彼は少しもつらそうな顔を見せず足早に進み、途中でドラッグストアに立ち寄ってからホテルに到着した。
その後、芹沢課長が私の足首の応急処置をしてくれることになったので、ひとまず私の部屋に彼を招き入れる。
ベッドに座るよう促され腰掛けると、芹沢課長もまた隣に腰を下ろした。