愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
衝撃の事実に私は言葉を失った。

ママから日下さんの奥さんが亡くなっていることを知らされてはいたが、その理由が白血病で、しかも余命を知っていて結婚しただなんて。

そんな深い愛の二人に私なんかが入り込む隙なんてこれっぽっちもないじゃないか。改めて打ちのめされたような気がして一気に気分が落ち込んだ。

「新井さーん、うちの日下のことちょーっとしゃべりすぎじゃない？」

いつから聞いていたのか、曽我さんがビールジョッキ片手に私と新井さんの間に割り込んできた。

「やだなぁ、マリエちゃん、もう一緒のチームになったんだから。あ、マリエちゃんとも長い付き合いなのよ、芽生ちゃん」

曽我さんを紹介するかのように新井さんが言うので、私は丁寧にお辞儀をした。

「あ、そうなんですね、私は西尾です。よろしくお願いします」

「西尾さんね、プログラムバリバリ書いてるんだって？システム改修期待してるわよ」

「あ、はい」

微妙にプレッシャーをかけてくる曽我さんに若干焦りを覚えつつ、私は苦笑いをした。
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