内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 祐奈は一生懸命そう自分に言い聞かせる。でも胸の中に黒い疑念が渦巻いて、苦しかった。
 あの取引の日、奈々美は祐奈と大雅が接触を持っていたことに気が付いた。まさか毎週会っていたことまでは知られていないだろうが、それでもそのことについて、大雅になにか言ったかもしれない。
 だから彼は祐奈に会いに来なくなった……。
 祐奈が文句を言えないような適当な理由をつけて……?
 そんなことまで考えてしまって、大雅からくる大和や祐奈を気遣うメールにも必要最低限の返事しか返せていない。着信には適当な理由をつけて出られないでいる。
 だっていったいなにをどう話せばいいのだろう。
 あのような場で話が出るくらいなのだから、奈々美の就職が事実上の見合いだったという話は、まったくの作り話というわけではないだろう。
 彼を問い詰めて真実を聞き出したとして、もしまた彼に裏切られることになったとしたら、祐奈はもう立っていることすらできなくなりそうだった。
 二年前、身を切るような思いで祐奈は大雅に別れを告げた。
 心が血を流して、その傷跡は結局、彼と再会するまで癒えることはなかったのだ。
 もしまた裏切られていたとしたら……?
 怖い。
 怖くてたまらなかった。
 真実など、永遠に知りたくない。
 逃げ続けてもなんの意味もないことはよくわかっている。
 でも……。
 降り続く雨が宇月の街を濡らすのを見つめながら、祐奈は小さくため息をつく。
 その視線の先、ガラスの自動ドアの向こうの通りに一台の車が停車した。寂れた温泉街には不似合いな赤いピカピカの高級車。
 後部座席がゆっくり開いて、小柄な女性が降り立った。
 祐奈は目を見開いて息を呑む。
 胸元が大きく開いたピンク色のワンピース。
 手には黒いブランドバッグ。
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