内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 奈々美だった。
 副社長室に副社長付きの秘書が入ってきたことに、大雅が不信に思ったのは、彼女が今日有休を取っていたはずだからだ。
「……今日は休みじゃなかったのか」
 眉を寄せたまま、大雅は彼女に問いかける。だが奈々美はその言葉に返事もせずに、スタスタとこちらへやってくる。
 およそ職場には相応しくない胸元が大きく開いたピンク色のワンピースを着て、書類などは一切入らないであろう小さなブランドバックを下げ、手には茶封筒を持っている。
 いつもは不自然なくらい大雅に愛想よくして見せるのに、今は無表情なのが不気味だった。
 やがて彼女は飴色の机の前で立ち止まる。そして大雅を見据えて口を開いた。
「大雅さん、宇月町役場の秋月さんとはどういうご関係ですか」
 唐突に放たれた不可解な問いかけに、大雅は一瞬目を見開いてそのまま黙り込んだ。
 頭の中を様々な思いが駆け巡る。
 なぜ彼女がこんなことを言い出すのか、理由はまったく不明だが、とにかく彼女の口から祐奈の名前が出たことに、言い知れぬ不快感を覚えていた。
 なにも答えない大雅に、奈々美が苛立ったような声を出した。
「最近、よく会いに行かれていますよね。うちのホテルを使うなんて、迂闊すぎませんか」
「迂闊?」
 大雅は呟く。
「迂闊です」
 奈々美が言い切った。
「私の目と鼻の先で、他の女性と会うなんて!」
 悔しそうに唇を噛む奈々美に、大雅は唖然としてしまい、すぐに言葉が出てこない。
 いったい彼女はなにを言っているんだ?
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