内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 縁談を断られておきながらいつまでもここに居座った自分を棚に上げて、奈々美は言う。
 大雅は心の中で舌打ちをした。
「保留ではない。俺は君とは結婚しない」
 今度こそはっきりと拒否の言葉を口にして、目の前の奈々美を睨む。
 誰かをここまで憎いと感じるのは今この時がはじめてだった。
 二年前、なぜ祐奈が突然大雅の素性を知ったのかがようやくわかった。
 彼女のこのような顔を大雅ははじめて見るけれど、おそらくはこれが本当の顔で、今のような剣幕で祐奈に大雅の素性をバラしたのだ。
 蹴り飛ばしてやりたいほど憎たらしいが、そもそもの原因を作ったのは自分なのだと大雅は自分に言い聞かせた。
「君とは結婚しない。ここにいることで諦められないなら、秘書室からは外れてもらう」
 もう一度、低い声で大雅は言う。
 奈々美がそれを鼻で笑った。
「それで? あの人と結婚するんですか」
「君には関係ない」
「関係あります!」
 奈々美が声を張り上げた。
「天沢ホテル副社長秘書として、あの人との結婚を承諾するわけにはいきません。お会いになられるのも反対です。……たとえ、ふたりの間に、子供がいようとも」
「君は……」
 大雅はそこで言葉に詰まる。
 この女いったいどこまで知っているのだろうという疑問が頭の中で渦巻いた。
 奈々美がその疑問に答えるように手に持っていた茶封筒を机の上にバンと置いた。
「この資料の中身を見ても、大雅さんはあの人と結婚したいなんて言えるらしら」
 彼女の言うことになど、耳を貸す必要はない。
 そう思いながらも、大雅は吸い寄せられるように茶封筒を手に取る。
 そして出てきた資料のタイトルを一瞥して眉を寄せた。
 祐奈についての調査結果だった。
「調べたのか? ……勝手にこんなことをして、ただで済むと……」
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