内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 涼しい秋の風が吹き抜ける整備された公園のベンチに腰を下ろして、祐奈は東京タワーを見上げている。
 無機質なのに、どこか温かみを感じるのは祐奈がこの赤い光を、ずっと父親と重ねてきたからだろう。
 なにもかもを諦めて、大和とふたりの静かな生活に戻る。自分に残された道は、それしかないのだろか。
 赤いタワーに、祐奈は胸の中で問いかける。
 だがもちろん、答えてくれはしなかった。
 ずっとずっと、天沢ホテルを憎み続けてきた。そうすることで自分を保ち、生きてきた。
 これはその報いなのかもしれない。
 まだ乾ききっていない祐奈の頬を、また新たな光が伝う。
 枯れることのない涙は、まるで彼への想いのようだ。
 この想いはきっとずっと、祐奈の中から消えることはないだろう。
 この先もこの気持ちを抱えたまま生きてゆくしかない。
 そんなことを考えながら、祐奈は星の見えない都会の空を仰ぐ。
 もう宇月に帰ろうか、祐奈がそう思った、その時——。
「祐奈!」
 人影のない静かな夜の公園に、聞き覚えのある声が響く。
 声のする方向を見て、祐奈は目を見張った。
「祐奈!」
 その人物は、祐奈の名前を呼びながら、こちらに向かって走ってくる。
 祐奈は反射的に立ち上がった。
「大雅……」
 震える唇で、彼の名を口にしたその瞬間。
「祐奈……!」
 熱くて力強い、彼の腕に包まれた。
 祐奈の世界がみるみるうちに滲んでゆく。東京タワーの赤い光も夜の空も、公園の木々も、なにもかもが混ざり合って、大雅しか見えなくなる。
 頬に触れるシャツの下、彼の鼓動が燃えるように熱かった。痛いくらいに抱きしめられて、祐奈は声をあげて泣きだした。歯を食いしばっても漏れ出る声を、溢れる涙を堪えることができなかった。まるで親を見つけて安心した、迷子の子供のように。
「祐奈、心配したんだ。電話に出られなくてごめん。……会えてよかった」
 すぐ近くから聞こえる本当に久しぶりの彼の声音。
 大好きな香りに包まれて、愛おしい人を信じたいという強い思いが、祐奈の胸でまた息を吹き返した。
「大雅、私、私……!」
 彼の胸にしがみついて、祐奈は震える唇を開く。
 なにが真実なのか、これからどうなるのか、まだまったくわからない。
 それでも、どうしても自分の中にあるこの想いを彼に聞いて欲しかった。
「私、私! あなたを、あなたを……!」
 言いたくて、でも言えなかったその言葉を祐奈は一生懸命口にする。けれどいざとなると、どうにもうまくいかなかった。
「私……!」
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