内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 女性は心底見下したような視線を祐奈に送る。
『貴方とのことは大雅さんにとって、完全に遊びだったみたいね。素性も隠していたなんて! ふふふ』
 そこからの記憶は少し曖昧だった。
 覚えているのは、その後すぐに電話で大雅に事実を確認したことと、そのまま別れを告げたこと。
 会って話をしたいという彼の言葉に耳を傾けることもしなかった。
 だって、会ってどうするというのだろう。
 嘘をついていたけれど、君への愛は変わらないという大雅の言葉を信じたとして、ふたりには未来はない。
 彼が天沢宗久のひとり息子だということに変わりはないのだから。
 アパートへ来られても祐奈はけしてドアを開けなかった。
 そしてそのまま逃げるようにプライマリーホテルの社員寮へ引っ越したのだ。
 もしかしたら彼が職場に来るかも知れないという祐奈の懸念は、杞憂に終わった。
 あの女性の言う通り大雅にとって祐奈とのことが遊びだったというならば、そこまでする必要はなかったということだろう。
 こうしてふたりの関係に終止符が打たれた。
 大和を妊娠していることに気が付いたのは、そのすぐ後だった。
 もちろん父親は大雅しか考えられない。だが、それを彼に告げることはもはやできなかった。
 大和を生むということに、迷いがなかったとは言えば嘘になる。
 親元を離れてまだ数年の祐奈でも世間が甘くないことくらいはわかるようになっていた。
 それでもひとりきりで大和を産むという決断を、祐奈に下させたのは、祐奈の胸にぽつりと残されて泣いていた大雅への思いだった。
 あの女性の言う通り、大雅にとって、祐奈との関係は単なる遊びだったのかもしれない。
 いやどうだったとしても彼が天沢宗久の息子という事実は変えられないのだから、やはりふたりには未来はない。
 だからといって祐奈の大雅への愛がすぐになくなるというわけではなかった。
 騙されていたのだとしても。
 愛されていなかったのだとしても。
 そして彼が父の仇の息子だとしても……。
 それでも祐奈は彼を深く愛していた。
 その証として、小さな命を授かった。
 祐奈は仕事を辞めて、故郷へ帰り大和を産んだ。

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