内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
「本来なら、もっと早く私がこちらへお邪魔させていただいて、ご挨拶しなければならなかったのに。遅くなりまして、大変申し訳ありません」
 時代から取り残されたみたいな古びた役場の応接室、黒い革のソファに座って、大雅は田原に向かって頭を下げた。
 その優雅な身のこなしと、精悍な顔つき、ソファとセンターテーブルの間で窮屈そうにしている長い脚に、お茶を運んできた若い女性職員が、目を奪われている。
「いやお忙しいのに遠いところまでお越しいただきまして恐縮です」
 向かいに座る田原が名刺を彼に差し出した。
 そして隣の都築を紹介した後、反対側に座る祐奈に視線を移した。
「彼女は普段は温泉街の案内所で観光客の案内をしております。温泉街のことは詳しいですよ。それに二年前までは東京のホテルに勤めておりましたから、この件に関わってもらうことになりました」
 田原の紹介に耳を傾けながら、大雅が射抜くような視線を祐奈に送っている。
 祐奈はその視線から逃れるように目を伏せて、「秋月です」と小さな声で自己紹介をした。
「よろしく」
 この古びた空間に場違いなほどよく通る声で、大雅が言う。
 その時、応接室の外の廊下から女性が騒ぐ声が聞こえて、一同はドアの方向を注目した。
 どうやらついさっきお茶を並べ終えて部屋を出て行った職員と、様子を見に来た別の職員が騒いでいるようだ。
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