内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 保育園からほど近い街唯一の総合病院を出ると、もうだいぶ日が傾いて、少し風が冷たく感じた。
 祐奈はジャケットを脱ぎ、抱っこ紐の中の大和を包む。
「お家に帰ろうね」
 声をかけて頬を寄せると、すべすべの頬がいつもよりほかほかと温かい。
 祐奈を見上げる瞳は少し潤んでいた。
 大和を生まれた時から診ている高齢の医師は、今回の熱をちょっとした風邪だと診断した。
 そのことに安堵して、祐奈は坂道を上る。
 今日は金曜日、明日が休みでよかったと思いながら。
 一度熱が出ると、大和の場合、大抵は下がるまでに三日はかかる。
 週末は家でゆっくりして、……月曜日までに下がるといいけれど。
 そんなことを考えながらなにげなく空を見上げた祐奈は山の上、宇月ランドがある場所から街のメインストリートまでの道を黒い車が滑るように下りてくるのに気が付いた。
 大雅だ。
 視察を終えて、戻ってくるのだろう。今日はそうたくさん時間は取れないはずだから、もう役場には寄らずにそのまま東京へ戻るのかもしれない。
 だとすれば、今祐奈がいる道のすぐそばを通ることになる。
 祐奈は思わず脚を止めて、ジャケットを大和の顔が隠れる位置にまで引き上げる。
< 24 / 163 >

この作品をシェア

pagetop