内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 反対に祐奈はワサビが大好きで、東京にいた時も季節になると実家から送ってもらって、ワサビご飯にして食べた。
 祐奈の作る料理はどんなものでも喜んで食べてくれた大雅だけれど、ワサビご飯だけ絶対に食べなかった。
 すりおろしたばかりのワサビは香りがよくてそれほど辛くないと祐奈がいくら言ってもダメだった。
『絶対に辛いに決まってる』と眉を寄せて。
 祐奈は大雅を盗み見る。いったい彼はこの女将の好意をどうするのだろうか。
 すると大雅はにこやかに「ありがとうございます」と答えた。
 宇月の視察に来ている以上、特産品を口にしないわけにはいかないということだろう。
 でも完璧に見えるそのスマイルの口元が、微妙に歪んでるように見えるのは祐奈の気のせいではないはずだ。
 その様子に、祐奈は思わず笑みをもらす。
 どんなに別人のように振る舞っても好みは変えられないということか。
 その祐奈を大雅は見逃さなかった。
 誰にも気付かれないように祐奈をじろりと見ている。その目は、"笑ったな?"と言っていた。
 祐奈は慌てて笑いを引っ込めた。
「いやー今年はじめてのワサビです。嬉しいなぁ」と田原が言って、各自の前に並べられたワサビを手に取り、下ろし器ですり始める。
 大雅はそれを手に取ってから少し首を傾げて祐奈を見た。
「そういえば、昔ある人からワサビには擦り方にコツがあると聞きました。上手に擦れば、辛みが抑えられて香りよく仕上がると」
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