内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
「祐奈」
 すぐ近くにある少し乱れた彼の呼吸が、祐奈の耳に囁いた。
「大変な時期をひとりで過ごさせてしまって……ごめん」
 苦しげなその言葉に、祐奈は思わず声をあげる。
「あなたのせいじゃないわ!」
 祐奈は、大和を妊娠したことを彼に告げずに去ったのだ。なにも知らなかった彼が、なにもできなかったのは当然だ。
「私が言わなかったんだもの」
「いや、俺のせいだ。俺が君にそうさせた。つらいこともあっただろうに……。よくひとりでがんばってくれた。ありがとう、産んでくれて、ありがとう」
 祐奈の目から熱い涙が溢れ出す。温かい、幸せな気持ちで心がいっぱいに満たされてゆく。
 彼との別れを決めた時から今この瞬間に至るまで、祐奈は一度も泣かなかった。
 大和という大切な命をたったひとりで育ててゆく。
 そのために、強くならなくてはならないと、自分自身に言い聞かせて。
 でも今彼の言葉に、涙が出るのを止められない。
 よくがんばった。
 産んでくれてありがとう。
 今の祐奈には、それだけで十分だった。
「明日」
 鼻をぐずぐずさせて祐奈は言う。
「うん」
「明日、大和にアイスを食べさせようと思ってるの。もし……、もしあなたの都合がつくなら……」
「……いいのか?」
 信じられないというように、大雅が祐奈に確認する。
 祐奈はその真っ直ぐな視線を受け止めて、ゆっくりと頷いた。

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