内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
「冷房、寒くないかな」
 すやすやと寝息を立てる大和を愛おしそうに見つめて、大雅が囁く。
 祐奈は微笑んで首を振った。
「直接風が当たるわけじゃないし、大丈夫よ」
 アイスを食べて、ご機嫌で部屋の中の散歩を楽しんだ大和は、しばらくすると眠くなってしまったようだ。少しぐずぐずした後、座布団を繋げて作った即席のベッドの上で寝てしまった。
 祐奈はふぅと息を吐く。
 子供が寝るとふっと肩の力が抜けるのは、母親の習性かもしれない。なにせ大和が起きているうちはかたときも目が離せないのだから。ひとりで歩けるようになってからは、なおさらだった。
 一方で、大雅の方はいくら見ても飽きないようで、いつまでも大和の寝顔を見つめている。
 祐奈はくすりと笑みを漏らして、そっと立ち上がった。
 奥山旅館のおそらく最高級クラスのこの部屋からは、宇月温泉からの海を一望できる。よく晴れた空に海鳥が飛んでいる。
「きれい……」
 祐奈は窓辺に歩み寄り、ため息をついて景色を眺めた。
「奥山旅館ってこんなに綺麗なのね。グレードが高いのは知っていたけど、ここまでとは思わなかった。まぁ、この部屋は特に豪華みたいだけど」
「……大切な人と会うから、とにかく景色のいい部屋にしてくれって頼んだんだよ。空室があってよかった」
 いつのまにかすぐそばに来ていた大雅が、祐奈の隣で微笑んだ。
 すべてを包み込むような優しい眼差しに、祐奈の頬が熱くなる。
 この眼差しに、二年前の祐奈はあっという間に恋に落ちた。
「や、大和のこと……、そんな風に言ってくれてありがとう」
 自分を見つめる彼の視線に、祐奈の頬がまた熱くなる。
 大雅がゆっくりと頷いた。
「こちらこそ、会わせてくれてありがとう」
 その言葉とともに、温かくて大きな手が、祐奈の手を包み込む。
 祐奈の胸がどきりと跳ねた。
 頭の中に浮かぶのは、ほんの少しの期待感と、とてつもなく大きな不安。
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