【完】片手間にキスをしないで
「先輩は泉沢のこと、ちゃんと好きなんですか」
おもちゃといえど、微妙に痕出来そうだな。そう摩りながら、静の問いに顔を持ち上げた。
続きじゃねぇだろ、全然。
「……なんとも思ってない奴と、俺は付き合わない。それが答えだ」
「つまり、好きなんですか?」
「ああ」
「じゃあ、言ってください」
「は?」
「ちゃんと分かるように。でなければ、諦めきれません。……逆にその程度なら、俺はどんな手を使ってでも掻っ攫う」
脅威をけん制出来ない程度なら。恥じらう程度なら───静の言葉の裏を汲み取る自分が、この時ばかりは憎かった。
「……きだよ」
「え?」
「昔から変わらず、俺は夏杏耶のことが好きだ」
調子が狂う。本人にも伝えた記憶のない言葉が、顔の中心を熱くする。
……コーヒーに発汗作用はないはずだが。
奈央はそっぽを向いたまま、眉間に皺を寄せた。