【完】片手間にキスをしないで
「……ッ。何か言えよ」
「いや……マジで言ってくれるとは思ってなくて。正直、開いた口が塞がらない状態です」
「お前が言えっつったんだろ」
「そうなんですけど……」
先ほどまでの威勢はどこへ行ったのか、熱が伝染したように頬を赤らめる静。
男同士でさぞ気持ち悪い絵面だろう、と思わず口を歪めた。
「まぁ……俺も、わざわざ2度失恋することなかったっすわ」
「2度?」
「泉沢から、冬原さんと付き合うことになったって報告受けたときに、1回」
「……ああ」
「試合の調子よかったんで『いいことあった?』って訊いたんですよね、俺。あのときは冗談抜きに、メンタルしゃぼん玉でした」
「どこがよかったんだよ。あいつの」
「さぁ……俺にはよく、分かりません」
「なんだよ」
「大した理由なんて出てこないっすよ。笑顔が可愛いとか……他の奴じゃダメってこと、くらいしか」