【完】片手間にキスをしないで
その間、奈央は肩で息を整えながら、いつの間にか図書館の前に立ち尽くしていることに気が付いた。
「あれ……なんで、お前がここに」
先に口を開いたのは、地面に伸びていた男の方で。ムクリと起き上がる図体に、奈央は凄んだ。
「それはこっちの台詞だ。つーか、お前誰だ。なんで俺を知っている」
「どうしてって……ミャオさんが、あんたに執着してるからだよ」
……やっぱり、あいつが来ているのか。思い伏せながら、的中した嫌な予感に額を押さえる。
「じゃあ、その肝心のミャオはどこにいんだよ」
「さぁね……俺にはあの人の考えてることは、よく解らない」
「……は?」
「あんたに執着してるなら、直接あんたを壊せばいいのに───」
含みを持った言葉が、高い天井に反響する。過ったのはまたしても不穏な気配。
───まさか。
奈央はその黒服を引きつけた後、自分の体重ごと柱に押し付けた。