【完】片手間にキスをしないで


「知ってる」

「でも、分かってないよ」

「分かってない?」


復唱された言葉が籠る感覚に、心地よさを覚える。夏杏耶は彼のシャツを握りしめながら、力強く───


「私は、奈央クンに守られたいから、一緒に居たいんじゃないよ。……奈央クンが好きだから、傍に居たいの」


そう紡いだ。


瞬間、耳元でふっ、と優しく吐息が漏れる。奈央ものだと気づいた夏杏耶は、その表情を見ようと試みた。


「見んな」

「えぇ……」


でも、またしてもそれは叶わなくて。夏杏耶はもどかしさを感じながら、彼の腕の中で口を尖らせた。


そして、精いっぱい強くその身体を抱き締めた。


「おい、夏杏耶」

「今日は、放したくない」

「は?……ずっと起きてる気か」

「今日は一緒に、ここで寝てほしい」


言った直後、少しだけ緩む腕の力。夏杏耶はその隙を縫って彼を見上げ、目を丸くした。

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