【完】片手間にキスをしないで
「……甘い」
「ああ……悪い。味見てたから」
「いつもこんな時間まで、作ってるの?」
「たまにな。百田……先生は、月曜しか時間ねぇから」
「あ……そ、そっか。先生ね」
「また妙なこと考えてんだろ」
「みょ、妙なことって?」
「ん。やきもち」
鼻先を鼻先でくすぐられる。予想だにしないその仕草に、胸がキュゥンッ、と呻いた。
「考える、よ……」
もう、もう……そんなの反則でしょう?! と心の内で叫びながら、夏杏耶はゆっくり声を落とす。
「でも……奈央クンには、夢を叶えてほしいから。その為に必要なことってわかってるから。ちゃんと、応援する」
「別に……夢なんて、大層なもんじゃねぇよ」
「じゃあ〝幸せ〟かな?」
「幸せ?」
「奈央クンのお菓子食べるとね、幸せだ、って気持ちになるから」
「……はずいこと言うなよ」
「恥ずかしい、かな……?」
「あぁ……まぁでも、不本意ではない」