身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
「気になる作品はあるんです。その写真が掲載されているから写真集が欲しかったくらいで。あ、これです」

写真集をめくる手を止める。

見開き一面に大きく写し出されているのは、地方の美術館のエントランスの写真だ。

広いエントランスは全体がブラウンとグリーンで統一されていて、まるで木々が生い茂る森のようだ。

磨りガラスの窓から漏れ入る日光が磨き上げられた大理石に反射して印象的な雰囲気を醸し出している。

全体的にかなり凝ったデザインだが、注目を浴びる一番の理由は壁一面のガラスウォールだ。

茶色い壁に設えたそれは、森の中に突然現れた滝のように見え、写真に収めるにはもったいないほどのインパクトがある。

「私、大学時代に訪ねたんですけど現物はこんなものじゃないんです。登山中にほっとひと息ついたら目の前に滝が現れて、疲れが一気に吹き飛ぶような感じがしました。マイナスイオンを浴びているような錯覚も覚えたし……。本当に素敵。この美術館は十階建てで上階が居住スペースになっているんです。私には手が出ない高級物件ですけど、一生のうち一週間でいいから住んでみたい。毎日この美術館に通えるなんて夢のようですよね」




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