身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
一時は柊吾との別れを決意するほど悩んだというのに。

「凛音……」

 呆然とする凛音を、柊吾は抱き寄せた。

「瑞生に悪気はなかったとはいえ、申し訳なかったな。そんなろくでもない嘘で凛音が流産したらどうするんだって怒ったら、それもそうだって慌ててた」

「あ……はい」

気落ちした様子で話す柊吾の言葉で、凛音はようやく事の次第を理解できた。

結局柊吾に見合いの話などなく、小高香波は柊吾とは別の男性と結婚するらしい。

「そっか……よかった。柊吾さんと小高さんが結婚しなくて」

「当然だろう。俺は凛音以外の女と結婚する気はない。……だけど、話しておくことがあるんだ」
 
それまで瑞生への怒りで荒々しかった柊吾の声が、静かな声音に変わった。

「……はい」

柊吾はなにか重要な話をするつもりだと察し、凛音はその場で姿勢を正した。

「この記事に出てる川北春己の長男で秘書を務めている雅己は小高香波の婚約者だ。いずれ父親の地盤を継いで政界に入るだろうと言われていた。……十年程前までは。そして、彼は」

淡々と話していた柊吾はそこで口を閉じ、タブレットを見ていた目を凛音に移した。


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