身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
「え、別になにも……。ただ社長は柊吾さんに幸せになってほしいと思っていると……そう言いたかっただけです」
 
今の言葉に嘘はない。

瑞生が叔母の愚痴に辟易して用意したものだとしても、柊吾に見合いを勧めるのはそれが柊吾自身の幸せにつながると信じているからだろう。

そうでなければ親友である柊吾に安易に見合いなどさせるわけがないのだ。

凛音はその事実を改めて思い返し、落ち込んだ。

ここ数時間で体調は回復の兆しを見せていたというのに、あっという間に疲労感が全身を包み込んだ。。

「幸せにって、大げさだな。……凛音?」
 
珍しく大きな声をあげた後、いきなり黙り込んだ凛音に柊吾はチラリと視線を向けるが、まだ高速道路の上だ。

それ以上なにも言わず運転を続ける。

凛音も見合いの話を気にしているのを知られたくなくて、助手席でおとなしく口を閉じ流れる景色を見つめていた。

「そろそろ出口だな。帰ったら一緒に風呂に入ろう」
 
束の間沈黙が続いた後、突然車内に期待交じりの柊吾の声が響いた。

「凛音を家に閉じ込めてふたりきり。風呂場で楽しむってのもありだな」



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