身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
「まだそんなことを言ってるんですか? お風呂なら何度も一緒に入ってるじゃないですか」

車内の空気を変えるような柊吾の声にどこかホッとし、凛音も明るい声で答えた。

「何度も入ったとしても、まだまだ足りない。毎日でもいいくらいだ」

柊吾は肩を揺らして笑いながら車線を変更し出口へと向かう。

ETCが反応する音とともに聞こえた柊吾の言葉に、凛音はぽっと顔を赤らめる。

凛音は自分の体に自信などなく、なにかと理由をつけて断っているのだ。

毎日など考えるだけでドキドキする。

けれど……と凛音は膝の上に置いた手をきつく握りしめ、思い直す。

そしておずおずと口を開いた。

「早く寝たいので、長湯はしませんからね……」
 
視線を泳がせささやく凛音に、柊吾は「それも、善処する」と楽しげに笑った。

「約束ですよ」
 
か細い声で念押しする凛音を横目で見ながら、柊吾はにやりとする。

柊吾と一緒にお風呂に入るのは考えるだけで恥ずかしいが、自分の立場を考えるといつまで柊吾と一緒にいられるのかわからない。

だったら柊吾とのどんな時間も大切にしたいのだ。

凛音は胸に溢れる不安をしまい込み、柊吾に笑顔を作って見せた。





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