身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
やはり睡眠不足を甘く見てはいけないと実感する。

今夜こそは柊吾を説得して睡眠時間を確保しようと心に決め、コーヒーメーカーのスイッチを入れた。

今日は柊吾お気に入りのコーヒーだ。苦みが少なくまろやかで、ほんのり香る甘い風味がいいらしい。

どちらかといえば甘党でスイーツ好きという、クールな見た目とのギャップは彼の魅力のひとつでもある。

今も冷蔵庫の中には近所の有名パティスリーの箱がどんと置かれていて、中にはモンブランがいくつも入っている。

柊吾が昨日仕事帰りに買ってきたのだろう。

冷蔵庫にしまった後、慌てて凛音の自宅まで車を走らせたに違いない。

凛音はフライパンの中のフレンチトーストを裏返しながら、昨夜突然凛音の家に現れたときの柊吾の切羽詰まった表情を思い出す。

冷静に振る舞っていたが、内心取り乱しているようだった。

そして、ベッドの中で柊吾が何度も繰り返していた言葉が頭から離れない。

『俺がどうなっても離れるな。俺の側にいろ』

凛音の体の奥深くに自身を貫きながら、言い聞かせるように何度もそう口にしていた柊吾。



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