身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
このところ心身ともに疲れがとれず改善する気配もない。

ひとまず今は柊吾との関係にあれこれ悩むよりも、しっかりと睡眠をとり体調を整えることが先決だ。

凛音は胸に広がる混沌とした気持ちを振り払い、フレンチトーストを焼き続けた。
 
その後ダイニングに現れた柊吾は、凛音が選んだベージュのパジャマを素肌に軽く羽織っていた。

その姿は色っぽく、凛音の鼓動は何度も大きく跳ねる。

「おはよう。……やっぱり。部屋を出た途端いい匂いがしたからピンときたんだ。凛音のフレンチトーストは絶品だから朝から気分が上がるな」
 
柊吾は声を弾ませ大きな笑みを浮かべると、カトラリーをセッティングしていた凛音を背後から抱きしめた。

起きたばかりの柊吾の体は温かく、沈んでいた凛音の心も優しく包み込む。

「いつもありがとう。だけど昨日、いや今朝も寝かせてやれなかったから朝食は無理して用意しなくてもよかったのに。体は大丈夫か?」
 
柊吾は凛音のうなじを甘噛みしくぐもった声でつぶやいた。

凛音のお腹の上で手を組み、甘えるように体を揺らしている。

「体は、やっぱり寝不足で調子がいいとは言えなくて」




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