百怪談
あの出来事は、みんなが寝静まった夜中の二時頃でした。



私は百物語の余韻で眠れずに、夜中にトイレへと向かっていました。



そして私が古い旅館の真っ暗な廊下を歩き、トイレを探していると、私の背後に何かがそっと近づいてきて、私の肩をポンと軽く叩いたのです。



私は息をのみ、ハッとしながら後ろを振り返りました。



するとそこには、部屋で寝ていると思っていた智則が立っていたのです。



「びっくした?」



智則はそう言って、うれしそうに笑っていました。



私はそんな智則の笑顔を見て怒る気にもなれず、少しため息をついて、すねていたことを今でもハッキリと覚えています。
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