シオン
「私は楓が好き」
そう言葉にするとどこかすっきりした。
「え」と彼は言葉を零す。
すると、どくん、と心臓が嫌な音をたてる。
彼の前で猫にはなりたくない。
彼に変なやつだと思われたくない。
そう思い、私は走った。全力で。
「待って!」と楓の声が聞こえる。躊躇してしまい、後ろを振り返る。
彼は思ったよりも近くにいた。
私は前に向き直り、また走り出す。
「あ、駄目だ」と思ったのとほぼ同時に猫になる。
目の前には紙が。
白い長方形の中に、まわりに小さく三つ葉で縁取られた紙。その中に文字が書いてある。
楓が追いつき、私の前で足を止める。
「…猫…?何だこの紙は…」
彼が文字を読む。
「「シオン」「君を忘れない」」
なぜか私は「ニャー」と鳴いた。
「…シオン?」と崩れそうな声で楓が呟く。
「ニャー」言葉は発せない。
楓に見られたくなくて走ったのに、今はこの猫が私だと、紫苑なんだと伝えたくて仕方がない。
私だよ。紫苑だよ。ここにいるよ。
どれだけ思っても伝えられない、伝わらない。
私なのに、「私だ」と言えない。
そう言葉にするとどこかすっきりした。
「え」と彼は言葉を零す。
すると、どくん、と心臓が嫌な音をたてる。
彼の前で猫にはなりたくない。
彼に変なやつだと思われたくない。
そう思い、私は走った。全力で。
「待って!」と楓の声が聞こえる。躊躇してしまい、後ろを振り返る。
彼は思ったよりも近くにいた。
私は前に向き直り、また走り出す。
「あ、駄目だ」と思ったのとほぼ同時に猫になる。
目の前には紙が。
白い長方形の中に、まわりに小さく三つ葉で縁取られた紙。その中に文字が書いてある。
楓が追いつき、私の前で足を止める。
「…猫…?何だこの紙は…」
彼が文字を読む。
「「シオン」「君を忘れない」」
なぜか私は「ニャー」と鳴いた。
「…シオン?」と崩れそうな声で楓が呟く。
「ニャー」言葉は発せない。
楓に見られたくなくて走ったのに、今はこの猫が私だと、紫苑なんだと伝えたくて仕方がない。
私だよ。紫苑だよ。ここにいるよ。
どれだけ思っても伝えられない、伝わらない。
私なのに、「私だ」と言えない。