カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました

雪乃さんのおかげで吹っ切れた。

「本日はおめでとうございます」

綾音さんを笑顔で迎えることが出来た。

「咲ちゃん!今日はよろしくね」

赤ちゃんを抱いた綾音さんの笑顔が眩しい。
武地さんも晴れの日に相応しい着物姿で、相変わらずとてもお似合いだ。

「こちらこそどうぞよろしくお願いいたします」
「なんかイキイキしているね」

武地さんに言われて笑顔で応える。

「月城くんが独占欲丸出しにするわけね」

綾音さんが武地さんと目配せして微笑んだ。
それだけでふたりの間で私と月城さんの話題が出ているのだと知れて少し嬉しかった。

「それで今日の主役はどこに?」

3歳の女の子を探すそぶりを見せると、綾音さんに隠れるようにしてこちらを見上げている可愛い着物姿の女の子と目が合った。

「こんにちは」

なるべく明るく挨拶をした。
でも返事はない。
ただジッと私のことを見ているだけ。

「そんなに見つめられると照れちゃうな」

戯けてみせたけど、子供の真っ直ぐな視線は胸のうちを見透かされそうで怖い。
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