カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました

「咲はこの写真、俺が撮ったと思ったんだよな?あと綾音が恋人だったとも」

その通りだと頷く。

「この綾音さんの表情は愛しい人を見つめるように見えます」
「なるほど。それはたしかに正解だな」

分かっていたことでも綾音さんと付き合っていたと言われると気持ちが沈む。
綾音さんの可愛い仕草や笑顔を思い返しては敵わないと思うし、はたまた武地さんとの幸せそうな様子が脳裏に浮かべばやり場のない気持ちになる。
でもそれを言葉にすることは出来なくて黙っていると月城さんはタブレットの画面を私の方に見せた。

「だいぶ前のデータだから読み込むのに時間かかったが」

そこに映し出されているのは綾音さんだった。
同じ場所、同じ構図。
でもなにかが決定的に違う。
現像されている写真と思わず見比べてしまうほど、違和感のある写真だ。

「この写真は?」
「綾音がモデルに応募するための宣材写真がほしいと言うから撮影したんだ」
「カメラ、辞めたのではなかったんですか?」

たしかそんな話だったと聞くと月城さんは困ったように微笑み、好きな子に頼まれたら断れなかったのだと教えてくれた。

「そう…だったんですね」

意思は強そうなのに、綾音さんの頼みならその意思さえ曲げただなんて。
予想もしていなかった答えに胸がチクっとして、ぎこちない言い方になってしまった。
< 125 / 142 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop