37℃のグラビティ
『柚、明後日なんか予定ある?』


そんなLINE電話が新海から架かってきたのは、冬休みに入ってすぐのこと。


新海の言う明後日の日付は、12月24日でクリスマス・イヴ。


「特にないけど……なんで?」


「俺の家、遊びに来いよ」


「別にいいけど……クリスマス・イヴだよ?」


女の噂が尽きない新海に、遠回しな物言いで、その日付を確認した。


「世間一般はね。でも、俺にとっちゃ一周忌みたいなもんだから」


そう軽口で言って、新海は鼻で笑ったけど、アタシはその言葉で、新海が未だに別れた彼女を引きずっているんだと確信した。


だからこそアタシも軽口で、敢えてなんてことない言葉を返す。


「今度は夜中じゃなくて、もうちょっと早く家出たいんだけど?」


「それなら、メシ食わずに、夕方から出てこいよ」


新海のそんな提案で、アタシは24日の夕方に、新海のマンションへ行く事になった。
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