37℃のグラビティ
『陽織に惹かれてくのが、怖かった……だから、嫌ってくれればいいって思って、彼女の事も話した。それ以上の事も言ったし、ずっとシカトしてた時もある。なのに、自分じゃなくてもいいから、俺と一緒にいたいとか、バカみたいな事言って、泣いてさ……」


「そんな事言わせるまで気付けないなんて、アタシにしてみたら、新海の方がよっぽどバカ」


「柚にはそう言われると思ってた」


「留学のことは、話したの?」


『話したよ』


「新海の気持ちも、ちゃんと伝えた?」


『いや。俺の気持ちを陽織に伝えるつもりないから』


「どうして!? あ……過去のトラウマってやつ?」


『陽織も遠距離恋愛で、彼氏と別れてるから。でもそんなの言い訳で、俺に自信がないんだと思う』


「意味のない繋がりをたくさん持つ新海より、どんなに女々しくても今の新海の方が数倍かっこいいよ?」


『女々しいってハッキリ言葉にされると、結構キツイんだけど。柚、それほめてんの?』


「もちろん。ほめてるよ?」


『ったく……柚にはかなわねぇな』


アタシと新海は、そんな会話をしながら笑い合って……電話を切った。
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