身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 私たちは、オフィス近くの商業施設の屋上にやってきた。
 開放されている屋上には、ちょっとした庭園がありベンチもたくさんある。

 剛士さんが先にベンチに座り、私も続いて少し距離を取って腰をかけた。

「すみません。せっかくの休憩時間に。食事をしながらで構いませんから」
「いえ。それで、私になにか?」

 時間も限られているし、と私から早々に切り出すと、剛士さんはこれまでと打って変わり急に口ごもる。

 そんなに言いづらいような話……? なんだろう。

 不穏な空気に感じて眉を顰めていたら、ようやく剛士さんは口を開いた。

「実は……夕花から聞きました。その……鷹藤さんの件」

 私は目を大きく見開く。
 剛士さんは気まずそうに私を見て、苦笑する。

「あいつ変わってるから……。自分で決めたらとことんなので、僕も止めることできないんですよ。申し訳ない」

 剛士さんは身体を私に向け、頭を下げた。

「き、紀成さんが謝ることでは……」

 私はびっくりして狼狽えた。

 剛士さんが謝ることではないのに。
 まさか話がそれだとは思わなかった。

 婚約者の座を狙う夕花さんには驚かされたし、今も解決していないから悶々とはしているけれど、剛士さんは関係ない。

 剛士さんって、面倒見がいい人なのね。パーティー会場でも夕花さんと一緒にいたんだろうし、仲のいい従兄妹なんだ。

 剛士さんがゆっくり顔を上げて、微苦笑を浮かべて言う。
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